導入事例

株式会社ビューン様

電子書籍の時代を切り開くパイオニア「ビューン」には
激しく変化するデバイスやユーザーに柔軟かつ迅速に対応するインフラが不可欠だった

2010年6月にiPadの発売に合わせてサービスを開始した「ビューン」は、雑誌・新聞・テレビニュースなどのコンテンツを、ソフトバンク3G携帯電話、Android搭載スマートフォン、iPhone / iPod touch、や iPad で閲覧できるコンシューマ向けサービスです。多数の有名メディアを月額数百円で見ることができ、その操作も直感的に行えて簡単。「電子書籍元年」という言葉が聞かれるようになってからも、いまだにその夜が明けきらない現時点にあって、株式会社ビューン様の提供するサービスは「誰もが知っているメディアを誰でも簡単に見られる」という点で群を抜いています。
その話題性の高さからスタート時には苦労もありましたが、活発なマーケットの動きに即時対応できるインフラとして、IDCフロンティアのクラウドサービスをご活用いただいています。
<コンテンツ配信プラットフォーム>

紙媒体とデジタルデバイスの相乗効果で新たな読書スタイルを

ご採用いただきありがとうございます。まずは御社のビジネスについてお聞かせください。

ビューン iPad向けアプリ
ビューン iPad向けアプリ

ビューンの構想自体は、ここ数年の携帯電話市場におけるスマートフォンの台頭に端を発しています。携帯キャリアにとって、主力になってきたスマートフォンに対してどのようにビジネスを広げていくかというのがひとつの大きな課題で、ソフトバンクグループでは日本のメディア各社とパートナーシップを結び、コンテンツを最適な形で皆さんに見ていただくということがテーマになっていました。そこで、ソフトバンクグループの社内プロジェクトのような形で、新聞社・出版社・テレビ局各社の皆様とは話し合いを続けていました。

具体的に「ビューン」というアプリの形を取ってサービスとして提供することになった最大のキッカケは、ソフトバンクモバイルがiPadを販売できることになったことです。大きな画面でメディアコンテンツを楽しむことができる最新のタブレット端末が出てきたことで、これまで温めてきたビューンの構想を具現化するには今しかないと感じました。ソフトバンク、毎日新聞社、電通、西日本新聞社からの出資を受け会社を設立したのが2010年3月19日で、iPadの発売開始は5月28日。電子書籍ビジネスとスマートフォンビジネスの幕開けとも言えるこの時期に合わせてサービスを開始できたのは非常に意義深いことだと感じています。

また、ビジネスパートナーである新聞社・出版社・テレビ局の皆様からのご理解とご協力をいただいて初めて可能になったことですが、年代や性別に関わらず多くの方に楽しんでいただけるラインアップを実現できたとも自負しております。当初は、13社31メディアで開始しましたが、今では17社42メディア(2011年7月現在)を楽しむことができるサービスとなり、順次便利な機能も追加して、サービス改善に努めて参りました。ビューンは、月額料金で様々なジャンルのメディアコンテンツを一つのアプリで楽しめるという非常に珍しいサービスです。他社に先駆けてサービス提供したことによるノウハウと市場での強みを生かし、より魅力的なサービスを提供していこうと考えています。

サービスとして完成させるまでのご苦労はどのようなことがありましたか。

蓮実 一隆氏
蓮実 一隆氏

新聞・雑誌・テレビとまったく違うメディア同士のコンテンツを一つのサービスとして提供するため、メディアパートナー各社の皆様のご理解を得るまでが大変でした。複数のメディアをまとめて月に数百円ということで、各雑誌の価値が下がるのではないかと心配される方もいらっしゃいました。それでも、これによって新しい読者の裾野が広がるのではないかという可能性に共感していただき参画を決定していただいたメディアパートナーの皆様には大変感謝しております。
もうひとつは、サービス開始前にアプリを開発してなくてはならない時点で、誰もiPadを触ったことがないということでした。公式にアナウンスされている外形サイズ、重さ、画面の大きさなどから利用シーンを想像しながらの作業でした。日本に先行して発売されていた米国から直輸入したiPadで実際のテストをすることができたのは本当にサービスリリース直前でした。

サーバーもネットワークも即時拡張が可能、運用管理も任せられる

IDCFのクラウドをご採用いただいたポイントはどこでしょう。

想定していた事業計画よりも、数ヶ月くらい前倒しで事業を開始することになりました。その為、導入までのスピード感は非常に必要でした。急遽決定されたソフトバンクモバイルのiPad発売に合わせてサービスインするという極めてタイトなスケジュールでしたから、そこにしっかり合わせてサーバーを提供してくれる事業者であることが大前提でした。
もうひとつは、24時間365日の機器監視や障害対応をお任せできるかどうかです。ビューンとしては、ユーザー向けアプリやコンテンツ配信部分により経営資源を割き、サーバーの保守運用についてはその道の専門家にお任せするような体制をと考えておりました。もちろん、サービス提供価格が安価なものですから、事業開始からすぐにインフラにあまり高いコストはかけられないというのもありました。初期投資を抑えてユーザーの増加に合わせてサーバーを順次簡単に増強していけるということが重要だったのです。
ビューンのサービスは、ニュース映像動画やファッション誌のカラー紙面がほぼ1冊分配信されるなどリッチコンテンツなので、広帯域ネットワークを提供してくれる事業者である必要がありました。といっても、サービス開始直後、想定以上の急激なアクセス増加に耐え切れませんでした。iPadアプリからのアクセスが破壊的に多かったのです。そのような緊急時のアクセス増にも、IDCフロンティアは自社でバックボーンを持っているため、すぐに帯域を50倍程度に増やしてもらいました。その後、アクセスが落ち着いてからは当初から用意した帯域の20倍程度にして、今はそれで運用しています。

トラブル発生時にもサービス特性を理解した迅速な対応

サービス開始後、数時間でネットワークが輻輳してしまったのでしたね。

深澤 実樹氏
深澤 実樹氏

発売開始直後にiPadを買った人はかなりの割合でビューンを見に来てくれたようで、本当に予想外のアクセス集中でした。もともと最初に大きく話題を集めてサービス提供を開始するのが好きなソフトバンクグループですが、それにしてもあの時のアクセス数はものすごいものがあって、当事者として予測の読みの甘さを痛感しました。障害発生直後からIDCフロンティアと密に連絡を取り合い、すぐ担当の方がかけつけてくれて、暑い会議室で汗だくになって問題解決に当たりました。あの時、我々の「早急にサービス提供を再開しなければならない」というビジネスの事情を理解してくださり、二人の担当者が弊社に張り付いて長時間にわたって親身に対応してくれたことには本当に感謝しています。

その後、ネットワークもサーバーも増強しました。

事実、サーバリソースが全然足りなかったわけですから、再開する時にはそれに耐えうるようにしなければなりません。それで、仮想サーバーだけでなく物理サーバーも組み合わせて、スペックも大幅に上げる決断を行い、当初計画の約10倍にしました。また、冗長構成にして、ネットワークの帯域も増強しました。アプリ側のチューニングも並行して進めていて、3週間くらいかかった本当に厳しい復旧作業でしたが、物理サーバーの追加もネットワーク帯域の増強もスピード感をもって実現していただきました。

現時点では、データベースなど構成変更がない部分は物理サーバーで、ユーザーが直接アクセスしてくるWebサーバーは仮想マシンでというように使い分けています。Androidアプリでサービスを開始したり、新たなメディアコンテンツを追加するタイミングなどアクセスの増加が予測される時に、すぐサーバー増強する為には、仮想マシンの方が向いているのです。また、我々のようなベンチャー企業は、ユーザー数に応じてサーバーを増やしていくスモールスタートが理想で、物理サーバーを持ってしまうのは経営的にも得策ではありません。しかし、一方で、コンテンツ配信インフラの安定性とのトレードオフを考えなくてはなりません。このようなベンチャー企業特有の経営リソースの配分と中長期の事業プランを理解してもらったうえで、システム設計やサービス初期トラブルの対応にIDCフロンティアに随分と力を貸していただきました。

スマートフォンで本を読むのが普通になる日が必ず来る

その後、サービスは順調に伸びているわけですね。

スタート当初は13社31メディアでしたが、2010年12月にSoftBankスマートフォン向けのAndroidアプリを投入と同時に、2社9媒体を追加しました。さらに、今年の4月に神戸新聞社(デイリースポーツ)と、震災報道で注目が高まった河北新報社が参画しました。サービス開始直後のトラブルから復旧して以降は、ビューンにコンテンツ配信したいという様々なオファーをいまでも継続的にいただいております。

どのようなメディアを載せるのかという点については、何か方針があるのですか。

ひとつのジャンルでできるだけ競合しないようにという配慮をしています。また、読者にとって魅力があり価値の高いメディアにご参画いただける様に努力しています。インターネットでのこういうビジネスには2通りのやり方があると思います。とにかく数をたくさん集めて、何でもかんでも配信するというやり方。ビューンは、もうひとつのやり方を目指しました。誰でも知っているメジャー誌(紙)のラインアップで読者の支持を得ることです。これには理由があります。まずはスマートフォンやiPadで新聞、雑誌、本などを読むことを「普通」のことにしたいという思いがあります。電子書籍は、話題にはなっていますが、まだ実際に日常の中で読んでいる人はそれほど多くありません。しかし、数年後には必ず「普通のこと」になっているはずです。ですから、今のうちからiPadやスマートフォンで本を読むことに慣れてもらうというのが最初の目的です。iPadはデジタルデバイスにしては年齢層の高い方にかなり受け入れられているようですし、iPhoneを使う女性も増えています。だから、ストレートど真ん中の週刊誌から、スポーツ新聞やゴルフ雑誌、女性誌など、どのような人にとっても読みたい本が1つや2つは入っているようなラインアップにしています。
本の表紙アイコンが並んでいて、それを押せば読めるという、感覚的に分かりやすいユーザーインターフェイスにしているのも、そのためです。また、課金方法として30日で数百円というのも、これなら多くの人が許容してくれるだろうなと想定したからです。これで儲けるというよりは、まずは電子書籍を一般的なものにしたいという思いがあります。

参画いただいているメディアパートナー各社の皆様は、発売日当日からほぼ全ての頁をビューンに掲載している雑誌もあれば、段階的に掲載量が増えていく雑誌など様々なパターンがあります。また、新聞は全てビューン向け特別編集版で、各紙が連日オリジナルの紙面を制作して入稿してもらっています。参加メディアも電子事業に関する自社の方針や考え方に沿って、まだまだ試行錯誤を繰り返している状況ですが、編集現場の皆さんからは「一年間やってみて、電子のいろいろな課題が分かってきた。」、「次はこういう紙面構成にチャンレジしてみたい。」という前向きなコメントを多数いただく様になってきました。

市場ニーズに合わせてサービスを進化させていく

リニューアルもされていますね。

サービス開始から約1年後の2011年5月25日にiPhoneとiPadアプリのリニューアルを実施しました。ビューンのモニター調査を通じて要望の多かった機能をできるだけ多く盛り込みました。一番反響があったのは「一括/自動ダウンロード」です。ビューンのサービスは、コンテンツのダウンロードが重いので現時点ではWi-Fi環境下での利用ということにしています。ただし、コンテンツを完全にダウンロードしてあれば、Wi-Fi環境下でなくてもオフラインで読むことができるのですが、それに気づいておられないユーザーが多かったようです。そこで、それを分かりやすくして、さらにバックナンバーや気に入った数冊を簡単にダウンロードする機能をつけました。「朝ダウンロードすれば、通勤電車の中でも読むことができる」というものです。同時に、カテゴリ分けをして新聞を別枠にしました。「朝ダウンロードして通勤電車で読む」というスタイルと新聞は利用方法とニーズがマッチして、どちらも大きな反響をいただいています。
サービス開始してから1年が過ぎましたが、日本の電子書籍の世界でパイオニア的な役割を果たせているという自負はあります。2010年のビデオリサーチの電子書籍の調査では利用率が1位でしたし、ほどなく出た電通総研が出した電子雑誌の利用率調査でも1位でした。iTunesが毎年12月にカテゴリ別のベストアプリを表彰するRewindでも、ブック部門の3位になりました。いろいろトラブルもありましたが、一定の開拓実績は残せたと思っています。

※ ビデオリサーチ「デジタル雑誌の浸透状況」(2010年10月)
※ 電通総研「電子雑誌ストア利用」 (2011年1月)
※ iTunes Store「Rewind 2010」 (2010年12月)

クラウドサービスの導入を検討されている企業にアドバイスをお願いします。

様々なビジネス分野でそれぞれのライフサイクルがあると思います。それに合わせてその時々にベストな選択をすることが必要です。そのためにはスモールスタートが可能で拡張が容易なクラウドはもちろん適していますが、我々のように物理サーバーと併用するという選択もあるでしょう。PDCAサイクルを徹底して、最適なものを選んでいくのがいいと思います。
また、トラブルが発生した時に、担当者がどれだけ親身になってくれるかも重要だと思います。マーケットの動きが読みにくく、すぐにニーズが変わっていくようなITサービス分野において、万が一の場合の即時対応は必須です。担当者との直接連絡網を設けて即時判断および対応体制の強化を行ったことや、即時判断のための情報収集ルール/ルートをあらかじめ決めておき想定していたのもトラブルを乗り切れた要因と思います。

今後の展望や、IDCフロンティアに対する要望などがあれば教えてください。

日々増えていくビューンの読者層の利用方法やニーズは急速に変化しています。端末の種類も増えていますし、パソコンとスマートフォンの境目がなくなっていくように、テレビとインターネットの融合も進んでいます。それに伴い、あらゆるデバイスの通信回線の種類も増えています。急激に市場環境が変化する中で、いかにフットワークよくサービスを開発し提供していくか、そしていかにサービスの品質を確保していくかは、バックエンドのサーバーの強度や柔軟性にかかっています。そういう部分でIDCフロンティアの協力を得て、我々はさらに機動力と柔軟性を持ってビジネスを進めていきたいと思っています。

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導入企業様 会社概要

導入企業様 会社概要
会社名 株式会社ビューン
所在地 東京都港区東新橋1-9-1 東京汐留ビルディング
設立 2010年3月19日
代表取締役社長 大石 隆行
事業内容 インターネットを利用したコンテンツ配信サービス
URL http://www.viewn.co.jp/新規ウィンドウを開きます

掲載内容は、本事例の掲載日2011年7月27日時点の情報です。

記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。

2011年07月27日掲載